花岡 伸和 様
車いす陸上競技パラリンピアン
史上2度目となった東京でのオリンピック・パラリンピック自国開催を経て東京の街や日本がどのような変化を起こすのか、開催前の気持ちは未来への期待と「そんな大きくは変わらないのではないか?」という不安の入り混じるものでした。しかし、そんな思いを吹き飛ばすような新型コロナウイルスによるパンデミックがスポーツだけでなく我々の生活に影を落とし、その影響は開催前のポジティブな変化への期待を奪うものでした。
パラリンピックにおいては世界中から集まった障がいのあるアスリートや観客が東京の街をはじめ、インバウンドで日本各地を訪れることで「ダイバーシティ」を作り出してくれるはずでしたし、少なからず日本人がマインドチェンジするきっかけになったはずだと考えます。選手村から出られない選手たち、無観客で行われた大会、スポーツの持つ「きっかけ力」が発揮できない状況に置かれた東京オリパラは開催すれば成功という目標になんとか軟着陸したのが現実ではなかったでしょうか?
それでも、各地に撒かれたレガシーの種は、たくましく芽を出していることを大会後に訪れた様々な場所で感じることができました。2021年に海外チームの事前キャンプ地となったところでは大会後もその国との交流が続いていたり、スポーツ大会では東京2020大会ボランティアの方とお会いできたり、東京の施設改修やアクセシビリティなどハード面での改善が見られたこともありますが、私はやはり人の繋がりこそがレガシーであると気付かされました。
おりがみを含むそのソフト的レガシーの代表格でもある大学生たちのオリパラに向けた活動は、大会後の今もしっかりとに根を張り、強い幹から伸びた枝葉には未来に向けた実を結びつつあると感じています。若者ならではの多様な発想と、失敗を恐れない行動力で社会をきっとより良くしてくれると信じて私も彼らと共に歩み、彼らを応援したいと思います。