開催報告│第41回実籾ふる里祭り―中高生・大学生が地域祭りの新しい担い手に―

お知らせ・活動報告

毎年約3万人が訪れる、習志野市の大規模な地域祭り「実籾ふる里祭り」。40年以上続くこの祭りにおいて、今年も習志野地域わかもの会議”ちいわか”が中高生主体の企画を実施しました。

コスプレを活用したスタンプラリー、参加者が輪投げの的になる「人間輪投げ」、多世代が集まったフラッシュモブなど、中高生・大学生が中心となり、既存の祭りを新たな形へと発展させた取り組みが地域全体の注目を集めました。

地域の担い手不足や中学校文化祭の廃止など、地域と若者を取り巻く環境が大きく変化する中、“住民参加型の新しい地域イベントモデル”として今回の取り組みは大きな意義を持つと考えています。

3万人規模の「実籾ふる里祭り」とは:40年続く市民の一大行事

習志野市では、毎年11月3日(文化の日)に市内最大級の祭り「実籾ふる里祭り」が開催されています。駅周辺が歩行者天国となり、屋台、ステージ、パレードなど多彩な催しが行われ、長年市民に親しまれてきました。

来場者数は約3万人。市内外から多くの人が訪れる、いわば“地域の風物詩”とも言えるイベントです。

しかし近年は、全国的な地域課題と同様に、

  • 地域の担い手の高齢化
  • 若者の参加機会の減少

といった問題を抱えていました。
そこに新しい風を吹き込んだのが、「習志野市地域わかもの会議”ちいわか”」の中高生による企画です。


ちいわかが動き出した理由:若者の地域体験の減少

ちいわかは、市内の中高生・大学生を中心に活動し、地域課題を学びながら企画やイベントを行っています。

この取り組みが生まれた背景には、次のような地域課題があります。

●① 町会・自治会の高齢化

行事運営を担うメンバーが高齢化し、特に大規模祭りでは人手不足が課題となっている。

●② 中学校文化祭の廃止

習志野市内では、かつて行われていた文化祭が廃止された中学校が多く、「発表の場」「挑戦の場」が激減。
若者が地域と関わるきっかけがなくなりつつある。

●③ 若者世代の地域離れ

地域活動への参加機会が少ないため、若者が地域を「自分の居場所」と感じにくい状況が続いていた。

こうした流れの中で若者会議が取り組んだのが、
「地域の既存イベントを若者の学びの場・活躍の場に転換する」という試みです。


2チーム体制で中高生が企画:地域構造を活かした授業づくり

ちいわかでは、市内の地域構造に合わせて中高生を2つのチームに分けて事業を展開しています。

これは、地域の連合自治会の範囲に合わせて分ける方式で、
自治会との連携、地域資源の把握、企画の実施効率を高めるための工夫です。

今年の「ふるさと祭り」は、そのうち 習志野市立第二中学校×千葉県立実籾高等学校×実籾連合町会チームの中高生が担当しました。
昨年度に続き2年連続での参加となり、学生たちは前年の経験を生かして企画をブラッシュアップしました。


中学生の「やってみたい」から生まれた原点

企画の出発点は、中学生から出た小さな声でした。

「ハロウィンの時期に何かやってみたい」
「自分たちでイベントを作りたい」

こうした声を受け、ちいわかでは、すでに約3万人が集まる「実籾ふる里祭り」を活用するアプローチを採用しました。

●既存の大規模イベント × 若者の創造力

この組み合わせにより、若者が“地域のステージに立つ”機会が自然に生まれました。


コスプレ×スタンプラリー:祭り全体を回遊させる仕掛け

最も人気を集めたのが、中高生がコスプレをして参加者と交流するスタンプラリーでした。

●仕組み

  • コスプレ姿の中高生が祭り会場に登場
  • 来場者が見つけるとスタンプ押印
  • 一定数で景品と交換できる

スタンプラリーが生む「回遊性」は祭り全体の活性化にもつながり、家族連れから大学生まで幅広い層が参加しました。

●効果

  • コスプレが“声をかけるきっかけ”となり地域交流が自然発生
  • 祭り全体を歩くため、滞在時間が伸びた
  • 中高生にとっては「自分たちの企画で地域に役立った実感」につながった

前年からの継続企画であり、今年は運営方法が大幅に改善されました。


新企画「人間輪投げ」:中高生ならではのユニーク発想

今年初めて導入されたのが、学生たちが“輪投げの的”になる参加型ゲーム「人間輪投げ」です。

  • 中高生が三角コーンを頭につけて的を担当
  • 輪が入ればスタンプ獲得
  • 的役は交代制で担当し、1日中賑わいを見せた

中高生と子供、地域の方々との交流を計りながら、臨機応変に難易度も変えられるため、色々な方に合わせた 楽しい輪投げとなりました。


フラッシュモブ「マツケンサンバ」:世代を超えた一体感

祭り終盤には、中高生・大学生によるフラッシュモブが実施され、50名以上の方にご参加いただきました。
お馴染みの「マツケンサンバ」が流れると、会場のあちこちにいた若者たちが一斉に踊り始め、市民も巻き込んだ大盛り上がりでした。


若者が継続する理由:地域が“思い出の場所”になった

祭り終了後、参加した中学生に向けてサプライズが行われました。
高校生・大学生が中心となり、これまで一緒に準備してきたメンバーへ感謝のメッセージを伝えると、多くの中学生が涙しました。

ちいわかが実施するプロジェクトの大きな特徴は、参加者が継続的に関わることができる点です。

  • 中学生 → 高校生になっても戻ってくる
  • 高校生 → 大学生になっても企画側として参加
  • 大学生 → 中高生のサポート役に

この循環により「若者が若者を支える」構造が生まれ、地域コミュニティに新しい風が吹き込まれます。そして、大学卒業後は「地域の側の大人」として、次の世代と連携する主体へと育っていくことを期待しています。


若者主体の地域参画が示す、新しい“公共の形”

今回の取り組みが示したのは、地域の大人と中高生の出会いを適切に構築することができれば、
若者は地域の担い手になれるということです。

これにより、

  • 地域の担い手不足を補い
  • 地域の交流を活性化し
  • 若者自身の成長につながり
  • 地域への愛着を生む

単なる“若者が手伝うイベント”ではなく、
地域づくりの一端を担い、地域の未来を形作る当事者として育っていく仕組みが動き始めています。


未来に向けて:若者が地域で挑戦を続ける場を

ちいわかは、今回のふるさと祭りを通じて、
「中高生が地域を動かす力がある」
ことを改めて確認しました。

NPO法人おりがみとしては、このノウハウを活用・発展し、地域 コミュニティとの協働事業などへ展開していくことを目指します。