パラスポーツ・ダイアログ

プロジェクト概要

パラスポーツを通して、学校のクラスを「小さな共生社会」へ変えるプロジェクト。一般社団法人Knockuと連携し、パラスポーツの教育プログラムを研究・開発・実施しています。
パラスポーツ選手の「強さ」だけでなく「弱さとの向き合い方」にスポットライトを当て、障害当事者との対話を通じた学びを提供。
学びの結果をデータ分析し、成果を可視化し、科学的な根拠に基づいた「共生社会教育プログラム」作りを目指しています。

※一般社団法人Knockuのウェブサイトはこちら

なぜやるのか

オリンピック・パラリンピックへ抱いた夢

私たちは、2014年から2021年の7年間に渡り、オリンピック・パラリンピックに向けて取り組んできました。東京2020大会という歴史的な大舞台で、日本中で若者の創造的なプロジェクトが展開され、その機会をひとりでも多くの若者が享受できる環境を作ることが私たちのビジョンでした。

東京オリンピック・パラリンピックが目指した世界は、共生社会でした。パラリンピックの成功に向け、多くの人々が連携しました。しかしながら、2020年に待ち受けていたのは、パンデミックでした。不要不急の行事が中止に追い込まれる中、パラリンピックも無観客で実施されました。大会終了後、私たちの心の残ったのは、「このままでは終われない」という感情でした。

私たちは、このムーブメントを継承し発展させていくため、一般社団法人Knockuと連携し、パラスポーツに着眼した新たなムーブメントの創出に踏み切りました。

共生社会とは

私たちが目指す共生社会:「小さな共生社会」

共生社会の一般的な定義は、文科省や内閣府、障害者基本法など、様々なところから発表されていますが、以下のような内容にまとめることができます。

全ての人々が障害の有無に関わらず、互いの存在や違いを尊重し、支え合いながら自分らしく活躍できる組織やコミュニティに所属し、地域において人々が共に活動することのできる社会。

この定義は、理想的な社会を表現している一方、社会全体に及ぶ内容でもあるため、共生社会に具体的に近づく実感を得ることは難しいと考えられます。そこで私たちは、社会全体の共生社会を考えるのではなく、地域における共生社会実現の最初のステップとして、誰もが人生の最初に経験する社会である「学校」を、「小さな共生社会」へと変えるアプローチを検討しています。

※障害の定義:ある者が多数派の人々と比べて身体・精神・能力・社会的な制約があることにより、他の人々が当たり前に参加できることにアクセスできない現象のこと

共生社会の実現に関連のある諸要素

「小さな共生社会」の実現を考えるにあたり、「助ける力」と「助けを求める力」の2種類に分けて教育プログラムを検討しています。さらに、それぞれの要素を分解し、以下の5つの項目に整理し、教育プログラムを開発しています。

①自尊感情:自分のありのままの自分を受け入れる力
②障害理解:自分とは違う他者を尊重する力
③援助要請:誰かに助けを求める力
④共同体感覚:自分が組織の一員であると自覚し組織に貢献しようとする力
⑤ルールメイキング:既存の枠組みにとらわれずにルールを作り変える力

共生社会実現に向けた4つのステップ

以上の諸要素をさらに整理していくと、「小さな共生社会」の達成段階を、以下の4つのステージ分けることができます。

ステージ1障害者・パラスポーツへの興味関心を高め、心理的抵抗感が低減する
ステージ2障害の社会モデルを理解し、障害に対する認識を変える
ステージ3自分の弱さと他者の弱さを認め、互いに助けを求めて支え合う
ステージ4障害をつくりだす制度・文化を自分たちの意志で変える
共生社会実現に向けた4つのステージ

私たちは、パラスポーツ体験会や、東京パラリンピックの観戦などを通して育まれた力を、上記のステージ1に位置付けています。そして、ステージ2から先へ進むための教材開発を行なっています。

プログラム実施の成果

生徒さんの声

ほとんどの生徒が真剣な表情で授業に臨んでおり、先生方も驚いていた。選手の話が終わった後は、想定をはるかに超える数の質問が飛び交っていた。例えば、「障害者に手助けしようとして断られたが、その時どうすればいいか?」「障害とどのように向き合ってきたのか?」と、障害についてより深堀りする内容が多く、障害者と共に生きていく意思とそのためにどうすればよいかを考える意欲が感じられた。授業後も、選手を生徒が囲んで質問や交流を続けていた。後片付けをしているときにも、下校中の生徒からたくさんの声がかかった。客観的な評価は、アンケート結果を分析してからになるが、障害当事者との直接的な交流が、障害理解に繋がるという先行研究を踏まえると、授業の高い効果が期待できる。

先生からのご意見

先生からは、「今後は2時間の時間を取って授業を実施して欲しい」「もっと大学生側の話も聞きたかった」といった意見をいただいた。これは、競技体験に加え、選手のストーリーを、生徒から見て年齢の近い大学生が引き出すという工夫による結果であると考えられる。また、「魂のこもった企画になっていて良かった」「生徒さんを盛り上げる司会の進行が良かった」といったご意見もいただき、一生懸命、情熱を持って授業を作ってきたことが伝わったと考えられる。先生から見た生徒の反応も好評で、生徒さんが選手に歯に衣着せぬ質問がされていたことから、障害者との心理的な距離が縮まっていたというご意見もいただいた。

選手からのご意見

選手からは、「今まで色々な自治体でたくさん授業をしてきたが、今回の千葉市での授業が一番楽しかった」といった意見をいただいた。事前の打ち合わせでは、選手が子供たちに講演する内容に、毎回悩んできたことが明かされた。今回の授業では、伝えるべきことや話のストーリーを、専門的な知識を持ち、かつ気心のしれた人物に委ねることができたことで、「選手が授業を楽しむ」ことに繋がり、その雰囲気が結果として積極的で明るい授業の空気感に繋がったと考えられる。

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